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安定した高収益を生み出す”田舎戦略”のススメ

安定した高収益を生み出す”田舎戦略”のススメ

東京の商売その2 石神井



練馬の石神井公園の直ぐ近くに”イルポンテ”というイタリア料理店があります。

駅から歩いて15分。
幹線道路から路地に入った少し目立たない場所にある小さなお店です。
住宅街に囲まれた、閑静といえば閑静な立地。
テーブル数5つしかなく、20人も入れば一杯になってしまうお店なんですね。


この水曜日、久しぶりにそのイルポンテに行ってきました。


久しぶり、というのは10年前まで私は石神井公園に住んでいたからです。
その頃、毎日のように入り浸っていたのがそのお店。


イタリア料理と言うと最近はカジュアルになりましたが、そのお店は昔から家庭的な雰囲気の内装に、イタリアの家庭料理をメニューの中心にし、人懐っこい笑顔のマスターと、優しさが話し方にまでにじみ出ている奥さんの2人でやられている、隠れ家的な、あるいは家庭的と言う言葉を絵に書いたようなお店で、その場の気持ちの良さからついつい毎日のように通ったのを今でも懐かしく覚えています。


味ももちろん格別でした。


入り浸っているうちに、マスターとすっかり仲良くなり、お互いの趣味が釣りだということも重なって、良く店が終わってから一緒に夜釣りに行ったり、同じくお店の常連だったおじさんたちと一緒に新潟や長野の渓流へ釣りに行ったりと、あまり良い思い出が少なかった私の学生時代にあって、気持ちの良い思い出が詰まったお店でした。


山口に帰ることが決まった私に「それならお店で出しなさい」と言ってオリジナルのパスタソースのレシピを教えていただいたりもしました。
(そして、そのレシピはアレンジされて、今、私のお店のオムライスのソースに使われていたりもします。)


さすがにあれから10年が経ち、移り変わりの早い東京だと言うことも踏まえて「もう無いかもしれないな」と思いつつ石神井公園に行ってみると、今でも同じ場所に同じようにこじんまりとした店構えでイルポンテはありました。


時間が少し早かったにもかかわらず、中は満席。
昔から、ろくな宣伝もせずに、でもいつも流行っているお店でした。

中へ入ると直ぐにマスターが「おお!久しぶり!」と気がついて下さり、奥さん共々久しぶりの来店を喜んでくださいました。

10年前と中の雰囲気も、人の雰囲気もそのまま。

客席を見渡すと、10年前に同じ店内でよく見かけた人が相変わらずいらしていて、なんだかタイムスリップしたような不思議な感覚でした。

変わったのはマスターの髪が少し白くなったぐらい。

でも後は本当にそのままでした。


メニューを見ると、さすがに体裁は変わっていましたが、中身まで昔のまま。
そのまんま10年間変わらないメニューで繁盛し続けているんだと思うと、同じ飲食店を経営している人間としては奇跡を見るような思いでした。

そして、昔と同じお気に入りのパスタを注文すると、味もそのまま。
全く変わっていません。


嬉しかったですね。


自分にとってイルポンテは特別なお店でした。
その特別なお店が、特別なまま変わらずある。

それがこんなに嬉しいと思ったのは、初めてだったかもしれません。


おそらく、このお店が特別なのは私だけではないでしょう。
相変わらずマスターは、お客さんたちと釣りに行ったり、遊びに行ったりしているそうで、その様子を楽しそうに聞かせてもらえました。
そして、1人1人のお客さんが帰られる度に友達が帰る様に声をかけられるマスターの姿を見ていると、このお店を中心したお客さんの繋がりはどこまで広いのだろうと考えてしまいます。


マスターに聞くと、このお店は今年で22年目だそうです。
おそらく、22年間、同じようにやってきたのでしょう。

マスターにとっては当たり前にやってきたこと。
その”当たり前”が当たり前じゃないことは容易に分かります。


このお店のやっていることを戦略的に分析することは出来ますし、解説することも出来ます。
しかし、それをやっても何の意味もありません。

マスターは戦略がどうのこうのとか、マーケティングがどうのこうのとか、そんなものは勉強したこともなければ触れたことすらないかもしれません。

ただ22年間、自分にとっての当たり前を普通にやってきた。
それだけなんですね。


東京で、こんな商売が成立していることに驚きを感じる人もいるでしょう。
でも、こんな”普通の商売”が成立するもの東京という場所の特徴なのかもしれません。
以前ご紹介した経堂のように、です。


帰り道、美味しいパスタの余韻を感じながら考えていました。
自分の商売の、あるいは私がコンサルとして指導していることの、青臭さを。
マスターに比べたら、まだまだ私のやっていることは青いな、と。


「もっと普通にやって良いんだよ」


直接ではありませんが、そんなメッセージを受け取った気のする石神井の夜でした。


久しぶりだったけれど、行ってよかったと思えました。



イルポンテの情報を出しておきます。
これをお読みで東京にお住まいの方は是非行ってみてください。
行かれた時は「島瀬の紹介で」とおっしゃると、きっと喜んでくださると思いますよ。


イルポンテ
http://www.shokudoraku.com/shoku/toku/kaiin/006.asp?sduid=SW6U7SKMASGT8G045X9AM2QN4PPA3RFA



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